
● 映画 聖なる鹿殺し 誰か一人を殺さなければ、全員死ぬ
◆ 聖なる鹿殺し 予告編 動画
◆ 映画 聖なる鹿殺し のあらすじ
郊外の豪邸で家族4人で暮らしているスティーブン。
心臓外科医の彼には気にかけてやっている16歳の少年マーティンがいた。
時々プレゼントをやったりしている。
マーティンには父親は亡くなっており母親と2人暮らしです。
スティーブンはそのマーティンを自宅に招き家族に紹介するんです。
それ以降スティーブンの家族に異変が起き始めます。
最初に息子のボブが下半身麻痺で全く歩けなくなったんです。
しばらくして娘のキムもやはり下半身麻痺で這って移動するような状態です。
2人を自分が勤めている病院に入院させますが、原因は全くの不明なんです。
精神的に追い詰められていくスティーブンと妻で眼科医のアナの2人。
徐々に訳が分かってきますが、
それは究極の選択をスティーブンに押し付けてきたんです。
主な登場人物
・スティーブン:主人公の心臓外科医。
・アナ:眼科医。スティーブンの妻
・キム:スティーブン夫妻の娘 14歳
・ボブ:スティーブン夫妻の息子
・マーティン:父親を亡くし母親と2人暮らし。16歳
・マーティンの母:夫を亡くしている。スティーブンに色目を使う。
◆ 映画 聖なる鹿殺し ネタバレ感想
じわ~っと怖い映画です。
深いところから静かに恐怖感が纏わり付いてきます。
壊れていく家族の絆。
なぜこんなことが起きてしまうのか。
それを疑問に思うスティーブンとアナなんです。
一家4人で表面上は幸せな家族。
事の始まりは心臓外科医で郊外の豪邸に住んでいる
スティーブンのある行動からなんです。
スティーブンはマーティンという父親を亡くし母親と2人暮らしの
16歳の少年に気をかけてやっているんです。
何故マーティンにだけ特別に気を掛けてやっているんだろう。
この疑問は物語がもっと進んでくれば理解できます。
表面上幸せな家族4人ですが、この家族の食卓を囲んでの
食事風景にも観ている者に何か違和感の感じさせます。
家族間でのはずむ話題や笑顔が全くないんですね。
スティーブンはある日自宅にマーティンを招き、
妻のアナや子供たちに紹介します。
よく見るとこのマーティンも不気味さを漂わせています。
話し声に抑揚がありません。
表情はほとんど変わりません。
喜怒哀楽の無い彼の顔をず~っと見ていると、じわーっと恐怖感を覚えます。
スティーブンが自宅にマーティンを招いたあと、
家族に異変が現れてくるんです。
息子のボブが急に下半身不随になり全く歩けなくなってしまったんです。
それだけではなく食べ物を一切受け付けなくなってしまったんです。
そんな時、スティーブンはマーティンから衝撃の事実を告げられます。
「最初に歩けなくなり、次に食べられなくなり、
目から血を流し、そして死ぬ。スティーブンが家族の誰かを
選んで一人殺さないと、スティーブン以外の家族が全員死ぬ」
「目から出血するのがステージ3だ、出血が始まったら数時間で死ぬ」
というんです。
何故そんな理不尽なことをするのか。
実はこれにはマーティンの父親の死の原因に関わってくるんです。
それはスティーブンがマーティンの父親の手術をして
その時亡くなっているんです。
それだけではないんですね。
手術の直前に酒を2~3杯飲んで酔った状態で執刀しているんです。
手術上で亡くなったんじゃなく、これは殺人ですよね。
だからマーティンが言うんです。
「先生は僕の家族を一人殺したのだから、
先生の家族も一人殺さなければバランスが取れない」
ボブを精密検査してみても何も異常は認められないんです。
そんな時にキムにも異変が起きてしまったんです。
ボブと同じように下半身麻痺で全く歩けない状態です。
実はこうなる前にキムはマーティンを愛し始めていたんです。
キムの部屋でマーティンと二人きりの時に、
キムは下着姿になってベッドに横たわりマーティンを誘うんです。
でもマーティンはキムに手を出さず、
部屋を出て去ってしまっているんです。
いろんな要素が有りながらも、子供二人が
全く歩けない状態になってしまったスティーブンです。
どんどんと時が過ぎていきます。
タイムリミットが迫って来るんです。
何もしないと家族3人が死んでしまうんです。
では3人の中から1人選ぶのか、それは誰にするんだ。
究極の選択を強いられたスティーブンですが、決心できないんです。
そんな矢先、ボブの目から血の涙が流れ落ちてきます。
遂に3人が死ぬタイムリミットがやって来たんですね。
この後スティーブンはどうするのか。
誰か一人をささげるのか、3人とも死んでしまうのか。
ぜひ映画で確認してください。
◆ 映画 聖なる鹿殺し の考察
この映画のタイトルである「聖なる鹿殺し」は、
全く持って変なタイトルですよね。
ほとんど何の意味があるのか分からないでしょう?
私は全く分かりませんでした。
これは映画の後半の残り時間25分の所でヒントが出てきます。
キムが作文でA評価をもらっているんです。
先生も絶賛するぐらいの出来だったらしいんです。
それの題材がギリシャ悲劇「イピゲネイア」なんです。
その物語の内容は、
ギリシャ軍がトロイアへの軍団を送るため港で待機していました。
ギリシャ軍総大将のアガメムノーンが女神アルテミスの
逆鱗に触れたため女神は風を止めてしまったのです。
女神の怒りを和らげるためアガメムノーンは
長女イピゲネイアを生贄にささげなくてはならないと決心する。
一方イピゲネイアを救い出そうとしていたアキレウスを
彼女はなだめ、彼女は生贄になることを覚悟します。
イピゲネイアは泣き叫びながら祭壇に引きずり出されていくよりも、
ギリシア軍を救う英雄として堂々と死ぬことを望みました。
劇の終末に伝令が現れて、イピゲネイアは
祭壇の上で鹿と入れ替わったと告げる。
女神アルテミスが現れてイピゲネイアの母を慰め
最終的に娘は生贄にささげられてはいないことを保証します。
しかしこの映画は、家族それぞれが自分が一番大事、
ということを強烈に描いていると思います。
姉のキムは弟のボブに言うんですね。
あなたはもう死ぬんだから、死んだあとは
音楽プレーヤーをもらう
と言うんです。
妻のアナは夫スティーブンに
1人殺すのだったら子供を殺そう、
私たちはまだ子供を作れるから
と言っています。
静かなる家族の崩壊ですね。
ただ、最後まで、なぜこの様なことが起きるのか。
マーティンの復讐劇なのは分かりますが、
どのような作用が有ってこのような事実を起こせるのか。
マーティンの呪いが作用したんでしょうか。
何はともあれ一度は観てください。
ただ何度も見ようとは思わないかもしれませんが…。
この記事に関連する言葉
イピゲネイア//アウリスのイピゲネイア//タウリケのイピゲネイア//ギリシア悲劇//ギリシャ神話//イリオス(トロイア、トロイ)//アガメムノーン//アルテミス//アキレウス//心臓外科(心臓血管外科学)//
◆ 私の評価
◆ 作品情報
□ タイトル
・聖なる鹿殺し
□ ジャンル
・サスペンス
□ 製作年
・2017年
□ 制作国
・アイルランド、イギリス
□ 収録時間
・121分
□ 音声仕様
・英 / 日
□ 監督
・ヨルゴス・ランティモス
□ キャスト
スティーブン[心臓外科医]:コリン・ファレル
アナ[スティーブンの妻/眼科医]:ニコール・キッドマン
マーティン[謎の少年]:バリー・コーガン
キム[スティーブンの娘]:ラフィー・キャシディ
ボブ[スティーブンの息子]:サニー・スリッチ
マーティンの母:アリシア・シルヴァーストーン
マシュー[麻酔科医]:ビル・キャンプ